篆刻作品のセカンダリー市場 |
昨日私の別ブログに「書作品はなぜ売れないか」という投稿をした。(下記)
http://blog.livedoor.jp/tenkoku1/
転載すると
「
先日ネットに、美術市場の解説が載っていた。それによると、美術作品のマーケットでは、作家が画廊などを通じ(または直接)作品を売買する直接市場があり、かつ、作家より作品を買った人が、それを転売するセカンダリーの市場(オークションなど)があり、その流通を経て、作品の値段が上がるということである。
それを読んでなるほどと思った。書作品では、このセカンダリーの市場が無いのだ。つまり、直接、書家の作品を買う人はいるのだが、それを転売するマーケットは皆無だ。そのセカンダリーの市場を通じての、書作品の価格形成(美術作品としては値上がり)が無いのである。
直接買った人にとっては、その書作品は10万円なら10万円、20万円なら20万円なのだが、その先が無い。先日も、驚くような大家の書家の作品が何万円で店先に並んでいるのを見たのだが、誰も買わない。
このセカンダリーの市場を形成するには、書家が書家の作品を積極的に買い、自分たちで書作品の流通価値を高める以外無いのだろう。具体には、書家自身で自分の書作品をヤフーなどのオークションに出品するなどの方法がある。
」
では、篆刻作品はどうだろう。
まず、踏まえておかなければならないのは、 篆刻作品の場合、売買するのは「印材そのもの」となる。展覧会などに出品されている「印影」は原則として売買はしない。版画などは、原版を破棄するのだが、篆刻の世界ではその習慣が無いから、無限にそのプリントである印影は作れるのだ。だから、「印材そのもの」を売買する。
唯一の例外は印譜といって「印影を小冊子にした印影集」だけである。これは多数の印を実際に押捺する手間が多部数制作の歯止めとなり、また、統一された内容(印影コレクション)として一定のプレミアムを認めることとなる。したがって、希少本としてのプレミアムという捉え方もある。
では、本題に戻り、篆刻作品のセカンダリー市場だが、落款印という「姓名」「雅号」を刻す印の場合は、直接市場における完全オーダーメードなので、それを転売するというのは考えにくい。大家と言われる有名篆刻家が刻った落款印のみが、セカンダリー市場で流通することになる。多分、例えば私程度の作家の刻した落款印は流通しないだろう。
落款印以外の詩句印はどうだろう。これは、セカンダリー市場というより、直接市場が無い。例えば、展覧会に出品した作品(当然印材ごと)を売ってくれということは皆無だろう。また、有ったとしても、こちら側に心構えが出来ていないので、「そう言っていただくだけで嬉しいです」みたいな話になってしまう。まあ、買った人にも使い道は無いだろうが、せめて「年賀状」とか実用に使える印の直接市場(販売)を形成することが必要なのであろう。
私も、毎年出版社などから年賀状印の制作を依頼されて、そのストックもあるので、そういった頒布会でもやってみたいと考えている。