方寸の世界に遊ぶ |
篆刻をやっている人は、どんなところが楽しく、面白いのだろう。それぞれ、面白さを見出し、やっているのであろうと思う。
最近、二玄社から書道講座新装版(復刻)が出たが、その6「篆刻」は、私にとっての座右の篆刻テキストといえる。
その本で、中村淳先生(2世中村蘭台先生の息、私の師匠の古川悟の兄弟子)が、
ーーー印稿は印を刻るための手段であって目的ではないこと、言うまでもない。しかし、私が本当に「方寸の世界に遊ぶ」のはこの時なのである。
と、述べられれている。
私もまったく同じで、篆刻のプロセスで一番楽しく、面白いのは「本印稿」作成である。墨と朱又は墨と胡粉を塗り重ね、「ああでもない、こうしたらどうだ」と字書、先人の印などを見ながら工夫し、考えるのは楽しい。
最近は、何年いや何十年前にやりかけ諦めた印稿に手を入れ、何とか見られるものにならないか再生作業をしている。そういうことをしていると、やはり「印文」が良くないと、良い印、格好の良い印は制作出来ないことを知るが、中村先生がおっしゃったように、私もこうやって「方寸の世界」で「遊んで」いるのだろう。