篆刻の鑑賞(改定) |
ちょっと篆刻の鑑賞ということについてお話したい。
印文は「一期一会」 物差しがあるので大きさの見当はつくと思うが、紙の大きさは縦30cm弱、横25cm。
上記は未表装の状態、「裏打ち」していないので、紙が若干丸まっている。これを、表具屋さんで「裏打ち」して、額装するか、掛軸(篆刻印影の場合は軸装はマレ)に仕立てる。
篆刻というのは、そもそもが「印」という実用のものなので、古くは「印そのもの自体」を鑑賞するということは無かった。したがって、印の大きさも、例外はあるが、せいぜい大きくても4cm×4cm程度の大きさが最大であった。例えば漢の時代では、2.5cm×2.5cm(又は2.3cm×2.3cm)という当時の1寸角(現代日本では8分角)の大きさが官印(公的<役所>印)のスタンダードであった。
そして、ある時期までは、印譜といって、分りやすく言えば、お寺めぐりの「集印帖」のようなBOOK形式で鑑賞していた。したがって、その当時も印の大きさは、漢時代とさほどの違いは無かった。もちろん、その時代も、鑑賞のために印を刻るという事ではなく、実用の印ということでもあったので、大きな印は必要無かったのでもあろう。
しかし、現代はというと、「漢字、仮名、篆刻」というような書道一部門として、広い空間を有する展覧会場の壁面または台上に漢字、仮名作品と同列で並べられるにしたがい、展覧会用として大型化している。まあ、漢字、仮名作品が「床の間」から「展覧会場」に観賞場所が移ったのと同様な動きということになる。
つまり、篆刻に関しては、手で持てる距離(印譜)で鑑賞されるものから、ある程度の距離(展覧会場)で鑑賞されるものに変化してきたといえる。この変化にしたがい、当然のことで表現方法も変化することになった。大きくは上記の「大型化」であるが、印(印影)そのものだけでは無く、表具なども含め、装飾的に、表現は正確か分らないが、ビジュアル化しているということであろう。
上記の画像(未表具で、その特徴は完全に捉え難いのですが)の作品もそんな動きの一つと言える。