刀法「線の限界に刀を入れる」 |
篆刻三法ということで「字法」「章法」「刀法」の3つが篆刻制作、篆刻鑑賞のキーポイントとされてきた。篆刻指導者の私としては、この3つを総合的に教えるわけだが、初心者の方には「刀法」に重点を置き指導する。篆刻はまず「刻れなきゃ」始まらないからと考えるからである。
この「刀法」において、初心者にみならずベテランでも陥りやすいのは、「布字」墨と朱の境い目に刀を入れられないことだ。これに関しての人間の心理は普遍的なものらしく、程度の差はあるが全てといっていいくらいの人が境いでなく「避けて」刀を入れる。したがって、白文では「細く」、朱文では「太く」なってしまう。
まず篆刻学習の第一歩の関門が、上記の「布字」墨と朱の境い目に刀を入れられるかどうか(二玄社書道講座「篆刻」では生井先生が「布字をしたら線の限界に刀を入れる」とおっしゃっている)であろう。これが出来るようになると見違える。
これは、正確に印刀、刃の位置を把握することにも関わってくる。つまり、常に刃先を見ることだ。良く見えないのであればルーペを使う、刃先に石粉が付けばそれを拭く、印面の石粉はブラシで払うといった手間も惜しんではならない。