たいていの篆刻のグループでやっていると思うが、私のところ(篆刻研究「書研印社」)でも、2ヶ月に1顆、課題印を刻ってもらっている。そして、それをコピー刷りの「書研印社」会報に掲載している。
一通りの印が刻れる為のカリキュラムに沿って指導の印とか毎日書道展への出品作品制作の他なので、余裕がある有志ということになり、それほどの数にはならないが、5~6点の出品はある。
その最新の課題印が干支の「庚寅」なので、ブログでも披露する。画像は、赤の単色コピーを更にスキャンしたものなので若干調子が悪いし、私のところの会員作品なので、それほどのレベルでも無いのだが、ご覧いただきたい。
<左から上村、中上榎本、中下石口、右上下2点小板橋諸氏の作品>
講評すれば、
★左の作者上村氏は、私のところで習い始めて2~3ヶ月程度の会員。印篆による作品で、「庚」を台形に作り、「寅」を逆台形にし、2文字収めた「狙い」は良いのだが、結果は見ての通り大きさが異なり違和感がある。2文字を調和良く配置する「目」を養いたい。あと、線質が平坦なので、勢いよく運刀したい。
★中上の榎本氏作品は、小篆による作。平凡だが、きっちり2文字を印面に収めている。辺縁の処理が左右同じように「欠け」をいれているのが単調か。
★中下の石口氏作品も小篆体による作品。この引首印形式はこの2文字を収めやすい。
★右の小板橋氏作品は、2顆共に、金文体ということになる。
上の白文印は線質が単調。それを改善すれば良い印になる。
下朱文印は左右に同じような形が並んでしまった。右辺縁も、もう少し残したい。
まあ、上記は辛口の講評になったが、この「庚寅」という印文は、「庚」も「寅」も左右に「手」(右手、左手の象形)がある左右対称の形(下記注参照)なので、作品として作るには難しい。
今年頂いた篆刻家の諸先生の年賀状を拝見すると上手く処理されていて「さすが」ということになるが、ちょっとこのブログでは著作権の関係で掲載は出来ないので、篆刻雑誌「楽篆」の干支特集(2月号)でご覧いただきたい。私の三角形の印も掲載(縮小で)されているはずである。
注(白川静先生編「字統」による=「説文」とは説が異なる。):
「庚」=午と収(きょう)とに従う。
両手で午(杵)をもち、穀物を脱穀し、また臼(うす)を杵(つ)く形である。
「寅」=矢と両手に従う。
両手をもって矢がらの曲直を正す形である。